京都・下鴨の甘味処「茶寮 宝泉」様の家具をリメイクさせていただきました。
下鴨神社のほど近くにある茶寮 宝泉様は、丹波大納言をはじめ最高級の材料にこだわった和菓子作りで知られる「あずき処 宝泉堂」様が営む甘味処。
今回、ほかのお店でお使いになられていた椅子を和室仕様にリメイクしたいとのご依頼を承りました。
もともとの椅子は「宝泉 JR新幹線京都駅店」様の茶寮で使われていたもの。
お店のリニューアルに伴い椅子を入れ替えることになり、今度は茶寮 宝泉様の二階の和室で使われることとなりました。
リメイク内容は、脚カットと畳摺り(たたみずり)の製作。
畳摺りとは、畳の損傷を防ぐために椅子などの脚の下に取り付ける横木のことです。
畳摺り部分はもともとのフレームと同じウォールナット材で製作しました。
茶寮 宝泉様の建物は、京都・下鴨の閑静な住宅街に佇む築100年ほどの日本家屋。
一階の畳廊下の先には広いお座敷席があり、どの席からも美しい日本庭園を眺めることができます。
今回リメイクさせていただいた椅子は二階のお部屋で使われるとのことで、先日お邪魔した際に、店主の古田様が案内してくださいました。
二間続きの広々とした和室は、窓の外の景色も少し変わり、一階のお座敷とはまた別世界の趣きが。
現在茶寮は一階のみですが、ゆくゆくはより落ち着いたプライベートに近い空間をと、二階を整えられているのだそうです。
「イメージしていた通りの空間になりました」と喜んでいただき、一安心しました。
思い入れのある椅子をリメイクし、また使い続けていただけるのは、わたしたちにとっても嬉しいことです。
お邪魔したのは6月下旬で、建具は一階のお座敷と同様、夏の室礼(しつらい)に。
畳の上には網代(あじろ)が敷かれ、琵琶湖の葭が使われた夏障子から注ぐ初夏の日差しは木漏れ日のよう。
昔と同じように、四季の移ろいにあわせて室礼を変えているそうです。
建物はもちろん、建具もおよそ100年前から大切にお使いのものばかり。
「同じものはもう二度と作れない。この古きよき日本建築を後世にも残していきたい」と古田様。
随所に施された細やかな職人技の数々を楽しそうに説明してくださいました。
和菓子作りに関する古い本や木型のデザイン集も見せていただきました。
カラフルな絵は、和紙に版で刷られたもの。
今もこうした貴重な資料から新しい和菓子作りのヒントを得ているのだそうです。
お話を伺いながら、夏の人気メニューの一つ「わらび餅」をご馳走になりました。
本わらび粉とほんの少しの砂糖だけで作られた、本物のわらび餅。
早めに召し上がってくださいねとおっしゃられた通り、出来立てのもっちり、つるんとした食感がたまりません!
見た目にも涼やかで、季節ごとに室礼を変えることと同様、和菓子の世界にも昔の人々の「視覚からも涼を取る」という工夫が感じられました。
若いお客様も多く、わざわざ楽しみに来てくださるのだから、お菓子はもちろんのこと空間でも精一杯のおもてなしをしたい。
そうおっしゃられる通り、お邪魔したのは平日の午後でしたが若いお客様が多く、心地よい静けさのなかで思い思いに寛いでいらっしゃる姿が印象的でした。
みなさまもぜひ、美味しい和菓子をいただきながら、まだまだ知らない京都の伝統に触れ、新鮮な発見をお楽しみくださいね。
2022.11.04 公開