ものづくりが好きな仲間が集まりスタートしたenstol。木工・塗装・椅子張りの職人全員が家具修理の経験があり、家具はきちんと直せばその先もまた長く使い続けられることをよく知っています。

「家具修理」と一言で言っても、家具の種類も、修理の内容もさまざま。
ひとつとして同じものが無いため、実は知れば知るほど奥深く、面白い世界なのです。
今回は、普段あまり目にすることのない家具修理の世界をご紹介いたします。

家具修理のご依頼内容には、主に4つのパターンがあります。
①新品購入時と同等のコンディションに直す
②直しつつ、新たな機能を付加する
③古き良き風合いを残しつつ直す
④暮らしの変化にあわせて姿・形を変える

【①新品購入時と同等のコンディションに直す】
家具修理と聞くと、おそらくこの内容を想像される方が多いのではないでしょうか。
傷んだり壊れたりした部分を、新品時の見た目や使い心地に”戻す”、という感覚に近いかもしれません。

こちらはセブンチェアの外れた座面の接着補修。
古い接着剤を取り除き、接着し直します。

キッズチェアの座面の張り替えと中身のウレタン交換。
小さい頃にお使いだったものを今度はご自身のお子さま用にとご依頼いただきました。
ウレタンの種類や厚みは、ご希望の座り心地にあわせてセレクトします。

ダイニングテーブル天板の傷や色ムラの塗装補修。
天板が無垢材の場合は表面を薄く剥離すると素地の木目が出てきますので、その上にご希望の塗装を施します。

棚板の欠けた箇所をパテで埋めて、塗装補修で仕上げた例。
側面に溝が彫られているため、パテ埋め後に成形し、筆で木目を描いて再現します。

【②直しつつ、新たな機能を付加する】
修理のついでに、「もっとこうだったないいな」という機能をプラスすることもできます。

こちらは飲食店でご使用中の椅子の張り替え例。
生地は新たに撥水防汚機能のあるものをセレクトされました。
中身のウレタン材は厚みのあるものに交換し、木部を組み直してぐらつきを解消しました。

ダイニングチェアの張り替え例。
猫が背もたれで爪とぎをして生地がボロボロになってしまったとのことで、新たに引っかきに強い特性のある生地で張り替えました。

【③古き良き風合いを残しつつ直す】
enstolで通称「風合い残し」と呼んでいる塗装の仕上げ方法で、古い家具ならではの味わい深い表情を生かしながら修理します。
決まったやり方があるわけではなく、職人の経験と感性に頼るところが大きい仕事です。

こちらは古いタンスの塗装補修。
全体に均一な塗装を施し塗り替えるケースもありますが、今回は傷みや汚れの激しい箇所をペーパーで削り落としてからクリア塗装を施し、木の風合いを残して仕上げました。
写真ではわかりませんが、引き出しの底板の割れも補修しています。

桐ダンス引き戸の取っ手周辺の色剝げの塗装補修。
周囲の色や木目にあわせて塗料を調合し一筆一筆着色をしていく、繊細な作業です。

【④暮らしの変化にあわせて姿・形を変える】
使い手や暮らしの変化にあわせて、サイズや見た目を変えたいというご依頼も多くいただきます。

こちらは洋ダンスのサイズを縮小した例。
写真は洋ダンスの上部分で、下部分とあわせて横幅を1350mmから1170mmに縮小しました。

ダイニングテーブルの高さ&天板サイズの変更例。
仕上がりご希望サイズ(高さ490mm、天板直径1000mm)にあわせて、脚カットと天板カットを行いました。

ソファの張地の張り替え例。あわせてバネの組み直しも行いました。
張地を変えると雰囲気もがらりと変わります。

家具修理はまさに千差万別で予想通りにいかないこともしばしばありますが、そのたびに職人同士で知恵を出し合い、お客さまに喜んでいただけるよう切磋琢磨しています。
そうして修理が完了した家具を見てお客さまに喜んでいただけた時は、安堵とともにこちらの喜びもひとしおです。

「30年程前に購入した椅子ですが、すっかりきれいで素敵にして頂き、また使うのが楽しみになりました」
(お客さまよりいただいたご感想)

ご家族が使っていた思い出の家具を修理して使いたいというご相談や、逆に自分が愛用していた思い入れのある家具をきれいにして子どもや孫に譲りたいというご相談も多くいただきます。

「ただいま綺麗になったテーブルが届きました!生まれ変わったように美しくなって嬉しく、これから気をつけて使わなくちゃ、と肝に銘じております。両親も喜ぶと思います」
(ゆくゆくご両親にテーブルを譲られるご予定のお客さまよりいただいたご感想)

enstolのスタッフがスタート時から共有している想いは『ものづくりを通じて、人々の暮らしにひとときのわくわくする瞬間を生み出す』 こと。
お客さまがきれいな姿になった家具に対面した瞬間や、日々の暮らしの中でその家具に触れる瞬間に、心は豊かな感情で満ちるように思います。

ものづくりを通じて「心豊かな瞬間」をお届けできるよう、わたしたちはこれからも家具をつくり、直し続けます。

2022.11.04 公開

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